自分分析学

言葉にしてみたい衝動の行き先

(物質的な意味での)文明との付き合い方①〜文明の功罪について一人ディベートを展開する〜

標題について

1.文明の功罪

2.文明社会の中での健全な生き方

を考える

 

1.文明の功罪

文明の功罪についてディベート形式で考えてみる

 

【命題:日本人は幸せになるために文明を発展させるべきだ】

 

肯定側:立論

まず言葉の定義をします。

「文明」を物質的に豊かになることとします。(今回は戦後のみの物質的な発展を文明とする)

人々が幸せを感じる最大の要因は、幸せについて75年間研究された心理学者のロバート・ウォールディンガー氏が「良い人間関係」であるとしているので「幸せ」を「良い人間関係」と言い換えます。

従って、命題を

「良い人間関係を生むために日本人は物質的に豊かになるべきだ」と言い換えて考えます。(これ以上命題を具体化すると本意が命題からずれてしまいます。意味が曖昧で少々分かりにくいディベートになりますがご了承ください。)

 

物資的に豊かになることで良い人間関係が生まれます。メリットは3つ。

1.友人と接することができる時間が増える

良い人間関係とは何をもってして築かれるのでしょうか?大きな要因として「時間」があります。気の合う人間とは一緒にいる時間が長ければ長いほど、絆は深いものになります。物質的に豊かではない頃は、病気や飢餓で早死する人が多くいました。内閣府のデータです。

f:id:bb40112082:20160910091228p:plain

1950年には60代前後で亡くなる人がいましたが、現在では女性では約87歳男性では約80歳まで生きることができています。約20年もあればより深みのある人間関係を築くことが可能です。

さらに単位時間あたりの友人と接することができる時間も増えました。例えば、SNSの普及。今では、1人でいてもラインやFacebookツイッター等のSNSを使って友人と手軽にコンタクトを取ることができるようになりました。さらに科学技術の発達によりリアルに近いコミュニケーションが取れるようにもなってきています。スターウォーズに出てくるような3Dなデジタルコミュニケーションができる日も遠くはないでしょう。そのように、より質の高い、リアルとほぼ変わらないコミュニケーションができる時代がくるはずです。こうして、良い人間関係が築かれます。

 

2.本当に気の合う友人を容易に見つけることができる。

SNSの普及により、多くの人とオンライン上で簡単に繋がれるようになりました。また交通手段の発達により容易に遠くに行けるようになりました。そうして、多くの人のことを容易に知ることができ、会うことができるようになりました。多くの人と会うことができるということは、一生付き合うような気の合う友人を見つけやすくなるということです。

3.友人に迷惑が掛かりにくくなる。

例えば、大事な予定の待ち合わせの時間に30分遅れそうな時、携帯があればその旨を伝えることができます。そうして、待っている側の理解を事前に促し、その予定に対して対処ができ、できるだけ被害を少なくすることができます。さらに持たれる悪印象も比較的少なくて済みます。しかし、携帯が無ければどうでしょう。待っている側は待っているその30分間、不安と苛立ちに苛まれます。また、その大事な予定への対処が遅れ、携帯があれば被るはずのなかった被害を被ることになるかもしれません。そうして、友好関係が悪化する可能性があります。

 

否定側:立論

言葉の定義は肯定側に従います。

まず、これまで文明と発達により以下のデメリットがある、或いは生まれるといわれています。

1.人類の滅亡の可能性

オックスフォード大学が人類が滅亡する12のシナリオを考えています。その内9つが科学技術の発展によるものです。それぞれの項目を挙げます。1.極端な気候変動2.核戦争3.世界規模のパンデミック4.生態系の破壊5.国際的なシステムの破壊6.合成生物学7.ナノテクノロジー8.人工知能9..その他の全く未知の可能性(人類の科学技術によるものが有力なので加算)人間の科学技術は進歩していますが、人間の知性はそれを扱うのに妥当な程進化はしていません。寧ろ退化していると言っている人もいます。その結果、己の身を滅ぼす可能性があるそうです。滅びてしまったら元も子もありません。

2.人格の劣化

良い人間関係を築くためにはより善い人格を持っていないといけません。より善い人格は主にその人の経験と思考によってつくられます。文明が発達したことにより経験の質の低下と思考の機会の剥奪が起こりました。

経験の質の低下については、オンラインにおけるコミュニケーションに依存をした為にオフラインのコミュニケーションをする機会が奪われたことが原因です。オンラインにおけるコミュニケーションはどうしてもオフラインのコミュニケーションにおける情報量と緊張感が異なります。そうして、人格の育成に繋がるような印象深い経験をすることが少なくなります。人格の善し悪しを決める大きな要因である「コミュニケーション能力」の低下がよく問題視されているのが良い証拠です。

また、オフラインのコミュニケーションの弊害として代表的なものに2ちゃんとツイッターが挙げられます。結果的に倫理観がなく、品格もない、無責任な発言の温床となっています。そうして、寧ろオフラインのコミュニケーションは、使用者の道徳観の欠如に拍車をかけています。

思考の機会の剥奪については、映像型マスメディアが主な原因です。多くの人間は暇ができればテレビをつけます。その時間は相当なものです。総務省によると、平日で2時間48.3分休日で3時間45.4分。右のサイトを使って、営業日数計算 - 高精度計算サイト

行政機関の場合、50年でどれくらいの時間をテレビに費やすのかを計算したところ、およそ2377日分の時間をテレビで消費してしまっていることが分かりました。テレビを見ることで、哲学する機会や思考を要する対人のコミュニケーションの機会が損なわれます。そうして、知性が損なわれてしまっているのです。

3.人間関係の質の悪化

いつでも連絡が取れるようになったので、人と対面で会うことの重要性が欠如します。そうして、必然的に人と対面で会うことを比較的大事にしなくなります。そうして、会話の質が落ちます。会話の質が落ちることで一人辺りの友情が希薄になります。オンライン上のコミュニケーションツールは希薄な人間関係をつくる要因です。

 

以上のような状況を変えるために、これ以上の物質的な豊かさの追求を控え、物質的な豊かさは現状を維持し、その代わりに国全体を挙げて精神的な豊かさの追求に力を注ぐことを提案します。精神的な豊かさの追求とは、人間学や芸術に力を注ぐことです。また上記に挙げた人間関係の悪化を招き、招くことが考えられる科学技術は以下のようにすることを提案します。

1.人類を滅亡させるかもしれない種々の原因→利益・便利さの追求を止め、人類滅亡防止のための対策を講じる

2.オンラインコミュニケーション→通信費を5倍

3.映像型メディア→10分あたり50円の料金設定にする

以上のプランによって

1.人類滅亡の可能性の減少

2.より奥行きのある人間関係の構築

3.より知性の溢れた人間関係の構築

が達成されます。

 

肯定側:第一反駁

1.ATTACK to 「人類滅亡論」

いずれはなんらかの理由で人類は滅亡します。それがただ早いか遅いかの話です。大事なのは、生きている人間がどれだけ幸せを享受できるかということです。

 

2.ATTACK to 「人格の劣化」

劣化するのはコミュニケーション能力くらいなものです。逆にコミュニケーション能力が劣っている人間はオフライン上のコミュニケーションの方がより円滑なコミュニケーションを取ることができ、オンライン上での友人をつくることができます。彼らにとっては救いの場でもあるわけです。

 

3.ATTACK to 「人間関係の質の悪化」

オンライン上のコミュニケーションで玄関トークのような相手との距離を縮める作業をやってしまえば、より早く相手のことを深く知れるような話題に移れます。要は使い方次第です。

否定側:第一反駁

1.ATTACK to「 友人と接する時間が増える」

長く生きるということは、それだけ認知症になる可能性が高まるということです。今や85歳以上は4人に1人は認知症になっていると言われています。認知症になるということは記憶をなくすということです。記憶を無くすということは、友人を無くすということです。そうなると死ぬ直前に、友人の少なさ故に寂しさを覚え、幸せは感じないでしょう。

単位時間あたりのコミュニケーション数が増えることが「良い人間関係」に繋がるかは分からない所です。中身のあるコミュニケーションをするには必然的に言葉の数が多くなります。しかし、ラインやツイッターは文字数を少なめにしないといけない節があり、中身のないコミュニケーションになってしまいがちです。その中身の無いコミュニケーションが良い人間関係の構築を助けているのでしょうか?良い人間関係とは質の高い人間関係のことであり、質の高さは中身の無い話ではつくることはできかねます。

 

2.ATTACK to 「本当に気の合う友人を見つけることができる」

理屈的には正しいように見えますが、果たしてどれほどの人がSNSを通して気の合う友人を見つけたことでしょう?殆どの人はSNS上で情報収集をしてからではなく、偶然的に出会った人の中で「本当に気の合う友人」を見つけていることだろうと思います。

 

3.ATTACK to 「友人に迷惑が掛からなくなる」

連絡手段が無い世界を前提に考えてください。連絡手段が無ければ例で示して頂いたようなことが起こるのは待ち合わせをする上では前提条件となっています。だから、ただそのような不測の事態だけで友人関係が悪化することは起こりにくいです。

 

4.ATTACK to 「ATTACK to 人類滅亡論」

それを言ってしまってはお終いです。例えば「明日、私はあなたを殺します。心配なさらないでください。死ぬのが早いか遅いかの違いです。」と言ったら納得しますか?

最大多数の最大幸福の考え方に従うなら、なるべく多くの人間がこの世に生を授かり幸せを享受した方が良いのです。

 

5.ATTACK to「ATTACK to 人格の劣化」

おっしゃる通り良い人間関係の構築の為に最も大切なコミュニケーション能力が損なわれるのです。さらに、コミュニケーションが苦手な方に手を差し伸べるということは彼らがコミュニケーション能力向上のためのインセンティブを欠くことに繋がってしまいます。

 

肯定側:第二反駁(情報が多過ぎるので敢えて反駁数を3つに絞ります)

1.ATTACK to 「ATTACK to友人と接する時間が増える」

あなたの言う最大多数の最大幸福の考え方に従うなら、4人のうち3人は認知症に掛かっていないので、長生きした方が多くの人がより幸せになります。また、中身の無いコミュニケーションでもコンタクトを取るという行為それ自体が良い人間関係を構築します。例えば、挨拶も形式的なもので特に中身はありませんが、しないよりした方がより良い人間関係が構築されやすくなります。

 

2.ATTACK to 「ATTACK to 「ATTACK to 人類滅亡論」」

未来のことは不確かです。もしかしたら、近い将来、隕石が落ちて人類が滅亡をするかもしれません。そんな不確かな存在である未来の人間を一人の人間としてカウントすることは妥当なのでしょうか。その不確かな存在を慮って現存している人間が苦労したとしてもそれは徒労に終わる可能性があります。そうであるならば、現存している人間のことを慮った方が、確実です。

 

3.ATTACK to 「ATTACK to 「ATTACK to 人格の劣化」」

遺伝的な要因で生まれつきリアルなコミュニケーションが苦手な人がいます。コミュニケーション能力の向上が困難な方です。そういう人は、その人の特性に合わせたコミュニケーションの手法をとった方が良いのです。

 

否定側:第二反駁

1.ATTACKto 「ATTACK to ATTACK to友人と接する時間が増える」

最大多数の利益の為に少数派の4分の1の人間の幸せになる権利を奪っても良いということを言っているのですか?それは少々冷た過ぎる考え方ではないかと考えます。少数派の人も幸せを享受する権利はあるはずです。

2.ATTACKto 「ATTACK to ATTACK to人類滅亡論」

外部からの脅威による人類存在の不確かさを話すのであれば、現存している私たちだって明日を生きているかどうかは分からないものです。もはや現存している人間も未来生まれる人間もほぼ同等の不確かさを孕んでいます。

 

 

終わり。

 

文明社会の中での健全な生き方は次回。